「その日集まった人たちと、その場でつくり、その日の夜に公演します。」

鈴木健太くんと最初にワークショップ型の公演『日々の公演』を立ち上げたのは2018年の夏のことでした。
会場は渋谷の神宮前にあるブロックハウスというところで、非常階段みたいな外階段を上って4階まであがると、
ギャラリーとしては珍しく天窓がある小さな場所があり、そこで9日間開催しました。
鈴木くんが書いた戯曲は5つの短いシーンから構成されていて事前に参加者に送られました。
そのほとんどのシーンには役のようなものはなく詩のようでした。
それを出来るだけで良いので覚えて来てくださいと参加者にはお願いしました。
毎日参加者も変わるし、人数も変わる。複数回、参加してくれた人もいれば、一度だけの人も、観客も同様。
とにかく心がけていたのは、事前に演出プランを決めないことでした。
出演者が誰かもわからない段階で演出を考えて、そこに参加者を当てはめるのは止めようと思っていました。
もし演出する側が最初からプランを決めているとしたら、
それに向いてる人もいれば向いていない人もいる、演技が上手い人も下手な人もいるだろう。
自分が見たいのは、そういうものではないと思っていました。
今から、自分たちが何をしようとしているのか、その時点ではわかっていませんでしたが、それだけは決めていました。
それから9日間怒涛の日々が続きました。
お昼過ぎに参加者が集まってきて、簡単な自己紹介をすませたら、すぐに稽古を始める。
夕方くらいまで稽古をしたら公演の準備をして、夜になると観客がぞろりぞろりと階段をあがってくる。
この繰り返し。同じようで同じでない、毎日まったく違う。日々の繰り返しのように。
あとで振り返ると自分がしていたのは、ただひとつ、参加してくれた人の素敵なことをひたすら見つけようとしていました。
そして、どの人にも異なる魅力がありました。うわー、なんて、みんな面白いんだろう。
同じ戯曲をことばを変えずにやっていても、大事になる台詞も変わっていくし、
当然、演出も変わる。不思議な神秘に立ち会っているような日もあれば、そこにいるみんなが楽しくて演者も観客もずっと笑っているような日もある。
晴れてたり、雨が降ったり、台風まで来たり。天井のどこかから滴り落ちてくる水をコップで受けたとき、
その鼓動のような音をそこにいる全員で耳を澄ませて聴いたことは決して忘れらません。
参加してくださった方が、人間をこんなに見つめる、見つめられる場所は他になく、
そのことの大切さを思ったというようなことを後に書いてくれましたけど、
多分、自分が演劇でやりたいことは、そういうことなんだなと教えてもらいました。
僕がこの文章を書いている時点で戯曲は書き上がっていませんが、
今回も参加者にお願いしたいことは事前に送られてくる戯曲をなるべく覚えて来てもらうことです。
あとは決まった時間に集まって、日中稽古をして、夜に観客を入れて公演します。
稽古では、やりたくないことはやる必要はありませんが、
たとえ意味がわからなくても、やってみようと思ってくれたら、大変ありがたいです。
その場で思ったことは、みんなが、そのまま口に出せるような場であれば良いと思っています。
何が良いのかどうすれば良いのか、答えはひとつじゃないですし、
何が正しいのか、それで良かったのか、いつも悩みますけど、
そこにいるみなさんで、ひとつのことを集中してやれば、
不思議と、みんながこういうことだったのかと思える場所に行きつけると思います。
それは最初に思い描いた場所ではないかもしれませんが、
これも悪くないな、これで良かったと思えれば、
そこにあるものを否定するのではなく、肯定出来たら、とても嬉しいことです。
出演者として、また観客として、ご参加お待ちしております。
生西康典
.______
日々の公演3
作 鈴木健太
演出 生西康典
美術/照明 小駒豪
日時 2026年4月18日(土)19日(日)
開場 19:00 開演 19:15
会場 機微荘(山形市平清水83)
予約 特設サイトから
お問合せ 株式会社機微 hello@kibi-inc.jp
企画/制作 菊地翼(株式会社機微)
.______
鈴木健太(すずき けんた)
1993年生。2015年に美学校実作講座「演劇 似て非なるもの」第2期修了。以降、演劇の劇作・出演。生西康典との共同作品としては『ロングショット』(2023)、『日々の公演2|抱えきれないたくさんの四季のために』(2021)、『日々の公演』(2018)など。ほかグラフィックデザイン、バンド「山二つ」でギター・ボーカル担当など。
生西康典(いくにし やすのり)
1968年生まれ。美学校 実作講座「演劇 似て非なるもの」講師。舞台やインスタレーション、映像作品の演出などを手がける。作品がどのようなカタチのものであっても基本にあるのは人とどのように恊働していくか。
人と出会い、同じ場所を共有する──生西康典インタビュー
